千里の鳥・万博の鳥(第124回)「ヒヨドリ」(2023年3月)
今月の鳥はヒヨドリ、大阪近郊では留鳥として一年中いるが、冬は北からきているヒヨドリも加わるためか数が多く、樹林の中で「ピィーヨ・ピィーヨ」と騒々しく鳴いている。ヒヨドリは体長28㎝と小鳥類の中で大きいこと、木から木へ移動するとき波形で飛ぶなど、観察しやすい鳥でわかりやすい。
今の季節、液果と呼ばれる色のついた木の実に集まっているが、地上に降りて草の葉を食べていることもある。
今は四季を問わず観察できるヒヨドリが、50年ほど前までは漂鳥で、冬は市街地にいても、繁殖期には近くの山地の林へ移動し繁殖・子育てをしていた。そのヒヨドリが漂鳥から留鳥に変わった理由は分からないが、時期についての記載が見つかった。
都心へのヒヨドリの繁殖拡大に最初に気づいたのは川内博・藤本和典の両氏、1968年から進出が始まり1973年にはほぼ全都で繁殖するようになったという。しかも、もともと森林性の鳥でありながら明治神宮や皇居といった広大な緑地ではなく、最初から小さな公園や街路樹での繁殖から始まった。このヒヨドリの都市進出は東京だけでなく、名古屋・大阪・千葉・茨城・埼玉なども同時進行的に見られ、当時鳥仲間の話題になったとのことである。★1
私(平)が鳥を見始めたのは1980年代であり、ヒヨドリはすでに留鳥となっていた。例えば1985年2月にスタートした万博定例探鳥会では、これまで開催したすべての探鳥会でヒヨドリを観察している。★2
ヒヨドリは万博公園内にある木の実・木の花を利用しており、クスノキ・トウネズミモチ・センダンなどが無くなりクロガネモチの赤い実や、ウメ・ツバキなど花の蜜を求めて飛び回っているが、夏にはセミを追いかけてつかまえていることもよく観察できる。
ヒヨドリの働きで紹介したいことの一つに、冬に咲く花の花粉を媒介していることがある。
通常、花の花粉はチョウ・ハナバチ・ハナアブなど昆虫が媒介していることはよく知られているが、昆虫は変温動物で寒い冬は動けないことから、冬に咲くサザンカ・ツバキ・ウメなどは恒温動物である鳥、中でもヒヨドリ・メジロに花粉を媒介してもらっている。ツバキやサザンカの花の蜜を吸いに来たヒヨドリが、顔の周りに花粉をいっぱいつけて黄色くなっているが、そのまま違う花に行って、その花粉をめしべに付けることで受粉が成立している。
日本では傍若無人にふるまっているヒヨドリ、世界的に見ると右図 のように日本(や台湾)など極東にしかいない生息範囲の狭い鳥、何で日本にしか住めないのか不思議である。
★3 今月有賀氏の写真のヒヨドリは、木の切り株に止まって、「今度はどこの餌場に行こうか」と周囲を見回している所かと思われる。
さてこの3年間、探鳥会はコロナ禍に振り回されてきたが、ようやく落ち着いてきたようである。現在新型コロナは感染症法上の2類相当で、入院勧告・就業制限・外出自粛の要請が行われてきたが、5月には通常のインフルエンザレベルである5類相当に引き下げられることになっている。
探鳥会ではこれまで通りマスク着用を継続し、5月以降についてはその時点の状況を見て対応を決める予定である。
越冬のため大阪近郊に来ている冬鳥がいるので、一年中で鳥の最も多い季節、マスク必着で探鳥会に参加しませんか。
①日本野鳥の会大阪支部主催
・名称 万博公園3月定例探鳥会
・日時 3月11日(土) 午前9時30分
・集合 自然文化園中央口
・解散 15:00頃日本庭園内の予定
・持ち物 弁当、時節柄 防寒対策を十分に
・担当 平 軍二 他
・内容 ツグミ・シロハラ・アトリ・ジョウビタキなどの冬鳥や、カワセミなどとの出会いを楽しみに園内を一巡する。
・参加費 会員100円、非会員300円
・参加希望 大阪支部HPより申込のこと
HPからの申込が難しい方は平あて連絡
② 吹田野鳥の会主催
・名称 万博公園探鳥会
・日時 2月21日(火祝)午前9時30分
・集合 自然文化園中央口
・解散 12:00自然文化園内の予定
・持ち物 弁当自由
・担当 平 軍二 他
・内容 ソメイヨシノのつぼみが膨らみ、早咲きのカンヒザクラが咲き始める頃、渡去直前の冬鳥を楽しむ予定。
・参加費 吹田会員無料、非会員200円
・参加希望 平(ひら)宛 メール or 電話で申込
上記①②に関する問い合わせは平(ヒラ)軍二 へ
メール g-hira@nifty.com
携帯電話 090-6901-1425
★文献1 唐沢孝一 「マンウォッチングする都会の鳥たち」草思社 1987年
★ 〃 2 平軍二「万博公園定例探鳥会記録」
★ 〃 3 真木広造・大西敏一「日本の野鳥590」平凡社(2000年)
**** 写真 ****
種名:ヒヨドリ
撮影日:2021年3月15日
場 所:万博公園
撮 影:有賀憲介