夢洲・大阪湾の野鳥を守ろう

 大阪南港野鳥園とともに大阪府の生物多様性ホットスポット(Aランク)に指定されている夢洲。
 自然干潟がほぼ開発により失われてしまった大阪湾岸にあって、人工島「夢洲」のその造成途中でできた湿地は、府内最大のシギ・チドリなどの水鳥飛来地として機能してきた。2025年大阪・関西万博の開催地として急ピッチで埋め立てが進められる中、水鳥などたくさんの生きものが生息地を失うことに。
 「SDGs達成への貢献」をうたう大阪・関西万博。SDGsへの真の貢献のためにも、失われた自然環境を復元し、鳥たちをはじめとする生きものの暮らしを守り、伝えていくことが求められる。

2025年大阪関西万博の会場となる人工島「夢洲」、夢洲に残る湿地に生息するシギやチドリ類、ツクシガモなどのたくさんの水鳥たちとどのように共存できるのかが今、注目されています。

■夢洲の湿地環境が失われる影響は

・世界的に減少が指摘されているシギ・チドリ類は、長距離の渡りをするものが多く、渡りの中継地の湿地の消失が減少の大きな要因となっています。大阪湾での飛来地消失は鳥たちにとっては大きな打撃です。
・本州最大級(2021年1月調査101羽)のツクシガモ(絶滅危惧Ⅱ類)の飛来地が失われます。
・ツクシガモやシギ・チドリ類など夢洲と南港野鳥園とを往来する水鳥が多くいることから、南港野鳥園への飛来数も激減すると考えられます。

・生物の多様性を守るために極めて重要な「生物多様性ホットスポット」という府民の貴重な財産が失われてしまいます

写真 ツクシガモ(手前はハシビロガモ)2022.3.13 
   本州最大の越冬地が消滅の危機にある
夢洲の位置

■大阪湾岸全体での干潟や湿地環境の復元を

・瀬戸内海の東端に位置する大阪湾は、古くからシギやチドリなどの水鳥の渡りの中継地や越冬地となってきました。そのポテンシャルは、夢洲など湾岸部の埋立途上地の湿地に集まる水鳥が証明しています。
・失われた干潟や湿地を復元し、取り戻すことで、湾岸部の生物多様性の回復が図られ、水鳥たちが必ず戻ってきてくれます。水鳥の飛び交う命あふれる環境を、未来の子どもたちに伝えていくことが私たちの責務です。

■この鳥を守ろう

シロチドリ

モニタリングサイト1000シギ・チドリ調査結果から全国でシロチドリの数が顕著に減少していることが報じられました(モニタリングサイト1000シギ・チドリ類調査ニュースレターAug.2022)2021winter_shorebird.pdf (biodic.go.jp)
シロチドリは、大阪湾岸部でもかつては一年を通じ、海辺で比較的普通に見られるチドリでしたが、今はまれにしか姿を見ることができなくなるほど個体数が減っています。
 海岸近くの砂浜で繁殖する鳥ですが、適地のない大阪では夢洲などの埋立地の裸地で少数が繁殖しています。営巣環境の保全・創出が大きな課題です。
資料;シロチドリを守ろう(PDF)


セイタカシギ

夢洲の塩性湿地が府内で唯一の貴重な営巣地となっています。2021年に複数つがいが繁殖に成功、2022年、2023年も同地での営巣が確認できました。
 かつて繁殖記録のある堺第7-3区などに夢洲の代替となるセイタカシギの営巣環境を創出することが急がれます。 2022年6月 大阪市長に緊急要望書提出/夢洲で営巣中のセイタカシギの保護について(緊急要望) 


コアジサシ

大阪ではコアジサシの繁殖コロニーのほとんどが、大阪湾岸の埋立地で確認されています。
夢洲にも一大コロニーが形成されていましたが、工事の進行などによる環境変化で、2022年以降、繁殖コロニーは確認できていません。沖合の新島(大阪沖埋立処分場)が新たな営巣地となっています。 資料:コアジサシの子育てを見守ろう(PDF)

夢洲をはじめ大阪湾の野鳥を守るために、生息環境の保全や回復に向けての取り組みなどを紹介します。