千里の鳥・万博の鳥(第117回)「ムクドリ」をお楽しみください。
今月は万博公園でタブノキの実にきていたムクドリを紹介する。タブノキは西南日本に多い木、万博公園では密生林と呼ばれている常緑樹林に多数植栽されている。このタブノキには1㎝径ほどの緑色の実が生り幾分黒みがおびるころ、鳥たちがやってくる。
タブノキへのお客さんはムクドリ、今の季節は今年生まれの若鳥もいて、「ギュルギュル」「ギャーギャー」と賑やかである。
ムクドリは体長24㎝、留鳥として一年中大阪近郊に生息している。春から夏にかけて夫婦単位で屋根裏・雨戸の隙間などに巣を作り、子育てをした後、6月後半になると繁殖場所を離れて、エサのある場所に集まるので、万博公園で見ることが多くなる。通常は芝生広場にムクドリの老若入り乱れ虫を探しており、時には親と同じ大きさになった子供が親にエサをねだっていることもある。そのムクドリ、黒く色づき始めた、タブノキの実をついばんでいる。
色のついた木の実=液果は、植物側が果肉部分は鳥のエサとして用意し、中の種子は鳥に遠くへ運んでもらうことで、生息範囲を広げている植物である。木の実の大きさは、果肉を少なくし種子を大きくしたいと思っている植物と、種子は小さくて良いので果肉の量が多いことを希望している鳥とがせめぎあいの結果で決まっている。実際のタブノキの実は他の植物の実に比べると、種子部分が大きく、果肉が薄いように思われるので、現時点の形状は植物側の戦略に軍配が上がっているように思える。
タブノキの実の好きな鳥として最近、カラスが加わった。「カラスの枝落とし」と呼ばれている行動で、遠くにある木の実をくちばしで咥え引っ張るため、枝が折れ枝ごとに落ちることを、クスノキ・ナンキンハゼなどで紹介しているが、今の季節、タブノキの根元には赤い果柄に実のついた小枝が沢山落ちている。
ムクドリの群れが一番よく目につくのは夏から秋の夕暮れ、集団で夜に一緒に寝るために集まる、ねぐら入りである。最初は住宅地近くにある小さな竹林や駅前の街路樹で、日の入り少し前にねぐら近くに集まり、数百羽程度の群れが上空を旋回している。秋の深まるころには、ねぐらの規模が大きくなり、いくつもの群れがねぐらの周囲を飛びまわり、風を切る羽音が聞こえるほどになる。日が沈むとともに全員がねぐらの街路樹や竹林に入り、おしゃべりは続くもののだんだん静かになる。
翌日の早朝、一斉にねぐら立ちをするとのことであるが、私(平)は確認していない。
さてコロナ禍、ここにきて第7波といわれる急拡大が続いている。暑い夏にマスクが必要という熱中症予防と逆の生活を強いられているが、何とかこのまま治まってほしいと思っている。
冬と同じ羽毛の洋服を着ている鳥は、暑い夏が大の苦手、そのため、なるべく動かず静かにしていて姿を見せることや声をだすことが少ないので、日本野鳥の会大阪支部・吹田野鳥の会とも、8月の探鳥会は夏休みとしている。9月になれば探鳥会を再開する予定であるが、秋の渡り鳥が動き始めるので楽しみである。9月もコロナ禍が今の状況であれば、申込制・定員制での探鳥会再開になる。
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種名: ムクドリ
撮影日:2022年7月8日
場所: 万博公園
撮影者:有賀憲介