千里の鳥・万博の鳥(第107回)「ヒドリガモ」(2021年10月)
暑いと思っていた夏が過ぎると「鳥の秋」と思っていたところ、今回冬鳥のヒドリガモが到着したとの写真を送っていただいた。大阪近郊ではカルガモを除くカモは冬鳥として渡来する鳥であるが、有賀氏によると摂津市・市場池公園にも、ヒドリガモとオナガガモが来ているとのことから、これから日々増えていくと思われる。
ヒドリガモはユーラシア大陸北部の亜寒帯~寒帯で繁殖・子育てをし、ユーラシア大陸中南部~アフリカ大陸北部に越冬する鳥、大阪近郊では冬鳥として、10月~4月の間、河川や池で冬越ししていく。
カモは繁殖地で子育てを終えると、一年間使った羽を脱ぎ変えるが(換羽)、新しい羽の雄(非繁殖羽)は全体が雌に似ていて、雌雄どちらかわからない姿になる。換羽中に天敵に襲われないよう目立たない地味な姿になるので、「光沢を失った」という意味から、エクリプスと呼ばれている。日本に渡ってきたばかりのカモ雄はエクリプスで、11月になると雄の特徴がはっきりわかる繁殖羽に変化する。
今回の写真にはヒドリガモが2羽写っているものの雄雌はわかりにくいが、手前が雌、奥が雄である。雄のエクリプスは繁殖羽のように額~頭頂の黄白色は出ていないが、首から上の赤みが強いこと、三列風切羽に黒みと羽縁の白がくっきり出ている。雄はこれから11月にかけ、エクリプスから繁殖羽に変化していくので、連続して観察し続けるとその変化が楽しめる。
尚、通常小鳥類では繁殖期の羽衣を夏鳥、非繁殖期の羽衣を冬鳥と呼んでいるが、4~5月の繁殖期の始まる春の渡り鳥は夏鳥、繁殖が終わった秋の渡り鳥は冬鳥なので、季節感と一致している。
最近、吹田市では公園の魅力向上事業と称して、桃山公園の樹木伐採などによる大幅な改修(飲食店・駐車場などの新設)を計画していたが、公園改修に対する反対意見が多く、幾分縮小する方向にある。
一方カモの場合は、エクリプス(非繁殖羽)のまま冬を過ごすのでなく、11月頃には繁殖羽に変化するので、真冬に繁殖羽となっている。これはカモの繁殖準備期が真冬に始まっていることを示し、小鳥のように繁殖羽を夏鳥、非繁殖羽を冬鳥とする呼称になじまない。
さて、コロナ第5波は人流制限、コロナワクチン接種率の進展(50%超)の効果があり、ようやく緊急事態宣言が解除された。
解除されたものの日本野鳥の会大阪支部万博探鳥会、吹田野鳥の会探鳥会とも、10月開催予定は中止を継続し、11月以降は10月の状況を確認しつつ再開を検討したいと思っている。
そんなことで、10月も一人バードウォッチングを継続し、身近なご自分のフィールドにきたカモ雄のエクリプスや、コサメビタキなど秋の渡りの小鳥などを楽しんで下さいますように。
★1 大阪府ガンカモ調査結果(2019年度)
大阪府動物愛護畜産課
**** 写真 ****
種 名:ヒドリガモ
撮影日:2021年9月28日
場 所:吹田市桃山公園・春日大池
撮 影:有賀憲介