千里の鳥・万博の鳥(第104回)「ヒヨドリ」(2021年7月)
今月紹介する「ヒヨドリ」、小鳥と称される中では大きい体長28㎝、スマートな体型の鳥である。セグロセキレイなどとともに日本近郊にしかいない特産種であるが、日本では我がもの顔にふるまっているヒヨドリが、なぜ日本に止まっているのか不思議に思われる。
しかもヒヨドリは1985(昭和40)年ころまで山地の林で繁殖子育てをし、冬になると平野部の都会に来る、いわゆる漂鳥だったと言われているが、今では都会の公園や住宅地に一年中いて、「ピィーヨ・ピィーヨ」とかしましく歌っている。
ヒヨドリの主食は花の蜜・木の実などであるが、都会の公園や庭木が多種多様でエサが豊富なこと、木々が大きくなり安全に暮らせることから、一年中都市に住むようになったと思われる。
ヒヨドリが主食になっている食べ物を列記するが、いかにバラエティに富んでいるかわかる。
花の蜜:サザンカ・ウメ・ツバキ・サクラ
花の花弁:コブシ・モクレン・タンポポ・パンジー
木の実:サクラ・ヤマモモ・エノキ・ムクノキ・ナンキンハゼ・クスノキ・ピラカンサ・ナンテン・クロガネモチなど
果物の実:カキ・リンゴ・ミカン
草木の葉:タンポポ・オオバコ・ユズリハ
野菜の葉:ハクサイ・キャベツ・ブロッコリー
動物:青虫・セミ・トンボ
など多種多様であるが、野菜や果物を食べられる所では害鳥として嫌われている。
そんなヒヨドリが木の実の端境期にエサとしているのが、今月有賀氏の写真にあるニイニイゼミなど、セミの仲間である。飛んでいるアブラゼミを追いかけるヒヨドリを見ることがあり、夏の食べ物としてセミが重要とわかる。
ヒヨドリの繁殖子育て期が小鳥の中では一番遅く、7月頃なので、このセミは巣に待っているヒナに運んだと思われる。吹田市内でほとんど見られなくなったニイニイゼミであるが、万博公園にはニイニイゼミまだ多いことが写真からわかる。(★1,★2)
年中羽毛を着ているヒヨドリなどの鳥は、夏の暑さで静かにしており、林の主役をクマゼミ・アブラゼミに譲っているが、主役のセミをエサ源に過ごしているかと思うと、不思議な気がする。セミが静かになる9月になると、ヒヨドリが声の主役に返り咲き、他の鳥たちの声も聞こえるようになる。
さて、コロナ第3次緊急事態宣言は6/20に解除されたが、「まん延防止等重点措置」が7/11まで講じられており、完全解除となっていない。夏の暑い時期、コロナ対策でマスクをしながらの探鳥会は、熱中症をも懸念する必要があり、日本野鳥の会大阪支部は万博探鳥会を含む全探鳥会の中止を本年9月末まで延長することにした。
これに合わせ、吹田野鳥の会も9月まで探鳥会の中止を継続する。
探鳥会中止が1年半となるが、再開時には高齢者へのコロナワクチン投与もかなり進展している筈なので、みんなで晴れ晴れと、鳥を見たいと思っている。
探鳥会が再開されるまでは、密にならないご自分のフィールドで、身近な鳥たちと、それを育んでいる身近な自然を、
「一人ウォッチング」
で楽しんでくださるように。
★1 吹田市セミの抜け殻調査
吹田市博物館だより43号(2010年)
ニイニイゼミ1.9%(クマゼミ56%、アブラゼミ41%)
★2 万博公園セミの抜け殻調査(2009~15年)
ニイニイゼミ7.6%(アブラゼミ77%、クマゼミ15%)
**** 写真 ****
種 名:ヒヨドリ
撮影日:2020年7月11日
場 所:万博公園
撮 影:有賀憲介