服部緑地定例探鳥会 9月13日(土) 天候:曇り一時雨 参加者:18名
出現種32種
ひたすらに暑かった今年の夏。6月が雨で中止になり、7月、8月と夏休みで、服部定例はなんとか酷暑が過ぎてからの再開にできたのか?降水確率50%の曇り空、日差しはないし、何なら風も吹いていて、まがりなりにも秋の気配じゃあないか?あとは鳥が出てくれるとよいのだけど、だいたい9月の定例の時期には、渡りの波を外す・・・というジンクスができつつあります。それが認知されているのか、毎年9月は参加者数が少なめで、今回も定員を大きく下回る18名。そこは視点を変えて、3か月ぶりのリハビリにちょうどよいコンパクト感とも言えます。
さて、集合場所の駅前でこそ、イソヒヨドリが囀ったり、イカルの小群が飛び抜けて行ったり、と、にぎやかしがありましたが、緑道を下る道すがらは結局、寂しげなモリオカメコオロギの声がこだまするばかり。
高川に降り着いても、前日の雨の余韻で増水気味の川面に、セキレイ類の姿は見えません。あれ、しかし、目についたのは、やけにスレンダーな紅いトンボ。何かなぁ、と即時にご紹介はできませんでしたが、帰って画像を補正すると、やはり!分布をどんどん北へ拡げている南方系のトンボ、ベニトンボでした。後で事情に詳しい方にお聞きすると、服部緑地一帯はすでに、ベニトンボに制圧されているんだとか。



その場で答えが出なかったトンボから、そそくさと離れるように園内へ移動。広場の上空をダイサギが旋回して、うずわ池へ向かうのを目で追いましたが、まずは新宮池をのぞきます。こちらも、アオサギの繁殖はとうに終わり、カモもまだ来ていない静かな水面。カイツブリの一家?が、池の隅に数羽浮いているのと、岸辺を歩くバン。カワセミの声は聞こえるのだけど、遠くです。今時のハシブトガラスが換羽の真っ最中で、オデコの段差を作る自慢のリーゼントがごっそり抜け落ち、くちばしだけ大きい、おかしな小顔ガラスに変わっています。オデコにとらわれると、ハシボソガラスと誤認しそう。
こう鳥が少ないと、音楽堂のあたりで出会ったスズメの群れに、妙に癒されます。わきの藪ではシジュウカラがヤマガラに追い立てられて、少し賑やか。



道路を渡って、さあ、さっきのダイサギはどこ?と、うずわ池を見渡しますが、サギどころかカイツブリもカワウも、カルガモも不在の、無機質な・・・いや、有機物を満面にたたえた緑の水面が横たわるばかり。背後の林からは、ずいぶん遅まきのヒヨドリの巣立ち雛の、一本調子な声が続いています。ここまでに渡りの要素は一切なし。切なる期待とともに、いなり山の坂道を登りますが、ポイントの子鹿橋付近の桜並木もすっからかん。ここはまあ、例年こんな感じだわ、と思えてきたのが悲しい。 メジロでも居ればいいかな、と尾根筋のコナラ林に入りますが、ただ歩き抜けるしかない静けさ。林内いちばんの下の広場で、もういいかな、というぐらい待つ無駄なあがきをした甲斐もなく、林を出ようと動き始めたその時。林内をスポーンと抜けてきた小鳥の影が、見える枯れ枝にピタリと止まりました。スコープに納めると、待ってました、コサメビタキ!ウンともスンとも言わないで林内を飛んできた鳥が、よくぞ見つかったものです。しばらく落ち着いていてくれたので、多くの方に観察していただけました。まずは渡り鳥、1種ゲット!
課題の1クリアに少し安堵しながら尾根筋のコナラ林から出ると、呼応するように「小雨」が降りはじめ、じきに本降りとなりました。50-50の賭けは、1mm以上の降雨に軍配。手近なあずまやで、しばしの雨宿りです。
雨はじきに上がって、円形花壇へ向かいます。途中、よく低い枝にコサメビタキがとまっている桜広場に2匹目のドジョウならぬヒタキを探しますが、叶わぬまま円形花壇に到着、トイレ休憩です。ここにもスズメたちの小群が飛来。今日の主役は君たちかも、と思える意外な存在感をかもします。



ここからも、さして目にとまる鳥との出会いもないまま、菰ヶ池に。水面に鳥の姿もなく、カメラマンさん方もおらず、巣を架けていたメタセコイアのてっぺんで鳴いていたハシボソガラスをじっくり見て、うん、ブトとは違うな、と納得して、中池に来ました。
おっっ、中池は水がぐっと引いていますな。そして、いるじゃないですか、チドリ類!それにイソシギも!今回は旅鳥を待ったり、雨宿りもして、かなり時間が押しているので、省略の予定だった若竹池でしたが、これをちゃんと見るには、向こうまで行くしかない。ということで、水際が少しばかり近い南側からの観察で、どうやらチドリはすべて、コチドリでなくイカルチドリと判明。翼も開かないしアイリングもあるような、ないような、幼羽か冬羽の地味なタイプが多かったのですが、イソシギより一回り大きく見えるのが決め手となりました。手前の水面には、まだ色がでていないコガモ3羽も登場。岸辺では先ほどから50羽ほどの群れで行動しているムクドリが、泥面で何かの餌をついばんでいますが、幼羽から換羽中の個体は、まだらに黒い新羽が混じって、一瞬、珍なムクドリを期待させてくれました。高川では見損ねたハクセキレイにキセキレイ、それとカワセミも登場。お昼も近い終盤に、立て続けに現れる鳥たちに軽くパニックになったところに「トウネンがいる!」の声。なんと、澪筋のあたりに、都合3羽も入っていました。



ああもう、しっかり時間オーバー決定。お昼もまだなのに、気持ちだけ満腹で山ヶ池へ。すると、なんとハスの葉の上を歩く長い指・・・!いえ、バンの若鳥です。終盤の追い込みがすごくて、期待感が一気に〇ンカクを求めてしまいます。ドウドウ。
しかしここらで、酷暑の片鱗が牙をむきます。先ほどの小雨でさらに涼しくなるのかと思いきや、むしろ湿度は倍増、そよ風も加湿器のような暖風。加えて一瞬のぞいた日射しが、蒸し焼きのごとく水蒸気を充満させ、お昼時なのと相まって、息苦しさを覚えはじめました。炎天下でなくても、湿度の熱中症もあるので要注意です。小鳥の森の終点へ歩を早めますが、幾名か、自販機を探しに向かった方もありました。
最終的に暑さもバカにならなかった9月の定例会、しかし中池の巻き返しが功を奏して、32種類とこの時期にしては上等の種数が観察できました。 次回10月は本格的に良い時期に突入しますが、私をはじめスタッフの所要につき、規模を小さくして実施の予定です。


