2025年3月探鳥会報告

服部緑地定例探鳥会 3月8日(土) 天候:晴 参加者:29名

出現種46種

 妙に暖かい日と、厳しい寒の戻りが続き、今日はどうなるんだか想像できない3月。集合場所の緑地公園駅前ビル群の屋上にとまっていたのは、イソヒヨドリ。今にも囀りそうなポジショニングですが、よく見ると雌でした(といって、囀らないこともないですが)。と、その前景の街路樹を移動してきたのはメジロたち。めいめいが葉間を舞うユスリカらしきものを空中で捕食しながら、ちょっとずつ移動していきます。そちらに目移りしていると、屋上のイソヒヨドリは飛び立って、ひらひらと舞う木の葉のように、しかし一気の急降下で、我々の頭上を抜けて、対岸のビルの下層へ消えていきました。これぞ、荒磯の断崖で鍛え抜かれた超絶飛行テクニック!高層の街に増えてきた理由の一端を垣間見た気がします。歩き始めてすぐ、たぶん同じイソヒヨドリが、緑道脇の広場の地面で採餌している姿も見られました。ともかくメジロもイソヒヨも、まだ繁殖よりも採餌優先モードのようです。

高川では、3種のセキレイに加えてシロハラも登場。例年なら、川床に降りて採餌しているのは、開けた場所が得意なツグミの領分だったのですが、それがまるっきりシロハラに置き換わってしまった感すらあります。なにしろツグミを見かけません。

 公園に入って一番、恒例のアオバトチェックは、今回も姿なし。この冬は全敗です。新宮池に向かう手前の植え込みからは、アオジの地鳴きが、地面付近ではなく枝の高い位置で聞こえてきました。きれいな「ぐぜり」が聞こえ始めるまで、あともう少し?

の先の地面を、のっそりと跳ねていた鳥は、なんとヒヨドリ。地上で餌を探しているようですが、お向かいでさっそうと落ち葉をめくって餌を探すシロハラと比べて、精彩がありません。顔を花粉で真っ黄色に染めて、春の花をむさぼる季節まで、あと少し。ヒヨドリにとっては試練の時かもしれません。草地では、たくさんのムクドリが歩いて採餌していました。(と、ここで、ムクドリの群れの後ろで、ツグミも静かに採餌していたようです。確認したリーダーが早退したため、鳥合わせでは「いなかった」ものとしてスルーしてしまいましたが、何名かご覧になっていたようなので、後付けながら結果に追加したいと思います。)

新宮池の水面が見えると、まず現れたのはハシビロガモのきれいなオス。グルグルと円を描く独特の採餌を、1羽だけで続けていました。見渡すと、岸辺にはまだたくさんのハシビロガモが寝ています。と、起きていた3羽がなにげに飛び立って、池の外へ。と思ったら、我々の頭上越しに戻ってきて、着水しました。そんな動きを何度となく繰り返しているのは、ひょっとすると北へ帰る準備運動だったりするのかも。飛翔時だけに見える水色の雨覆と緑の翼鏡、白黒の配色のセンスは、しびれるカッコよさです。そうこうしているうちに、木陰からは期間限定アイドル、トモエガモ’sも全員ご登場!

カモの動向に一喜一憂する一同の頭上では、松の木に巣作り真っ最中のアオサギたちが、時折「ガー」と、気の抜けた声を発していました。キジバトも枝をくわえて藪に入り、春への確実な足音が聞こえてきます。

うづわ池では、シジュウカラがさえずりで出迎えてくれました。しかし樫の木の下のマガモ達は、ほとんどお休み中。と、一行の頭上に大きな影を落としてカワウが滑翔、着水しました。こちらの水面は、相変わらず静かです。 円形花壇は引き続き工事中。遠くの落葉樹にアオバトでもとまってないかな、と探しつつトイレ休憩としましたが、残念、確認できず。すぐ背後の常緑樹で、2羽のエナガが、何かをむしっています。よく見ると、葉の隙間に詰められていたクモの巣?のよう。エナガの巣の主要な巣材です。派手なさえずりこそしませんが、エナガも繁殖活動に入った様子です。

梅林では、ちょうど咲き始めの梅がきれいなのですが、やはり工事中で入れません。柵越しに見えたのは、今日はどこに行っていたのか?ちょっと影が薄かったジョウビタキ。しかし、特徴的なお辞儀がなぜか見えない・・・と、よく見ると、尾羽が全部ありません!モズかネコか、天敵から辛くも逃げおおせたのでしょうね。

カワラヒワは新宮池の背後のアキニレにも来ていましたが、先月多かった原っぱの縁のアキニレの方にもちらほら。樹冠の全面を覆っていた実は、もう下層部にしか残っていません。樹下で動いた人影に反応して飛び立った数は、意外に多くて20羽弱でした。 その横の、ひときわ高いポプラ?の樹冠には、たくさんのハシブトガラスが集まっています。特に何をしているでもないのに、今日はやけに目立つな、それに引き換え、ハシボソガラスは?と案じていたら、菰ヶ池の端のヌマスギで、すでに完成間近の巣を作っていました。ハシボソガラスの方が、いくぶん繁殖開始が早めの傾向があるので、ブトばかり目立ったのは、ボソがそれぞれの巣場所に散っていたからなのでしょう。

中池では、岸辺で休むコガモを、わりと近い距離で観察できました。池の中に立つ杭の先には、モズ。水中のエビか小魚でも狙っているのでしょうか?はやにえのラインナップに、時に混ざる水産物は、きっとこうやって狙っているんですね。

若竹池へ向かう道中では、またしても鳥の死体。頭はしっかり残っていて、ハシブトガラスだとはわかるのですが、そこから下は背骨と、骨盤、足のみ。肋骨や腕の骨はありません。まるで何かの呪物のようです。若竹池にもカワウの死体が浮いていたとのこと。この冬は、野鳥の死に向き合う機会が多い気がします。鳥にとっても厳しい冬だったのかもしれません。先月はここで、ミコアイサに出会えましたが、今回はキンクロハジロの群れが精一杯。ミコ達は、他のカモ類より一足早く、北へ帰る旅に発ってしまったのでしょう。

山ヶ池の白鳥橋では、いつもどおり桟橋の餌付けに群がるオナガガモ、ヒドリガモ、オオバン。遠くにハスの間を抜けて泳ぐヨシガモは、今日は雌が1羽のみ。もっといないものかと探していると、手前にどーんと、カンムリカイツブリが目に入りました。しかも2羽。新宮池のような、深くて広い水面がお好みかと思っていたので、ハスの枯れ茎の合間で、ちょっと意外な存在感です。池べりを探しながら歩くと、辛うじてオカヨシガモも確認。他にたくさんいたのはマガモとカルガモ、それと数羽のコガモが、近い距離でよく見えます。そして、今日初めて聞こえた「チー」という鋭い声。カワセミが、青いつぼみのごとく、ハスの枯れ茎のてっぺんにとまりました!こちらもずいぶんご無沙汰に感じるのは、どこかの崖地で巣穴掘りに一所懸命なのかもしれません。

春めいてきた日射しの下、デイキャンプの人出もあって、鐘が鳴る丘で期待したルリビタキには出会えず。最後に民家集落付近で情報のあったトラツグミが出ていないか、小鳥の森を大回りしてみましたが、こちらも残念。そのかわり、サザンカの花が一斉に林床に散って、見事でした。鳥合わせ直前に、小鳥の森の樹上から飛び立ったアオバトを加えて45種(ツグミの抜けがあったので、実は46種)。もうすぐそこまで近づいた、春を予感する3月定例でした。