2021年11月12日:2025年日本国際博覧会環境影響評価準備書に対する環境の保全の見地からの意見書を提出

準備書についての環境の保全の見地からの意見

提出者名:日本野鳥の会大阪支部 支部長 松岡三紀夫
提出日:2021年11月12日

万博開催に伴う工事期間中並びに共用時に、夢洲に生息する鳥類への影響を最小限に止めるために、以下のとおり意見を述べます。希少な渡り鳥の保護のために各段のご配慮をお願いします。

■現在の湿地環境の維持・保全を可能な限り図ってほしい

ウォーターワールドがどのような整備となるか明らかになっていないが、見栄え優先の人工的な整備ではなく、現在の湿地環境の維持・保全を第一に考えてほしい。
現在、同湿地は面積が広大でかつ水深が浅く、大阪湾における最大のシギ・チドリ類、カモ類の重要な採餌、休息地として機能している。水際の泥湿地と水深10cm程度までの浅環境を維持し、深い場所でも水深が50cmを超えないよう配慮をお願いしたい。
開放水面が一定確保されても、全体がため池のように深い水位となれば、水鳥の生息には不適となり、当地をよりどころとしている多くの渡り鳥に致命的な影響を与えることとなる。
又、一部の水鳥に南港野鳥園との往来が確認されるものの、面積が夢洲よりはるかに小さく、周辺が港湾施設や住宅地であるな南港野鳥園に広大な当湿地の代替機能を全面的に求めることは、過去20年以上にわたるシギ・チドリ類やカモ類の個体数調査結果から考えると、非常に無理があり非科学的である。代替機能を南港野鳥園に求めるのであれば、南港野鳥園に隣接する空地などに湿地環境を造成するなどの南港野鳥園の湿地拡大計画も盛り込む必要がある。

■準備書記載の以下項目についての意見

準備書記載 第5章 環境影響評価の結果
 P508~ 2 施設の利用(施設の供用)、建設・解体工事(建設機械の稼働及び土地の改変・解体)に伴う影響の予測・評価 (1)環境の保全及び創造のための措置
〔供用時〕・ウォーターワールドは、水辺に生息する鳥類に配慮して開放水面を出来るだけ確保する。

意見①
ウォーターワールドがどのようなものとなるかが具体的に示されておらず、現在湿地に飛来しているシギやチドリ類、カモ類などの水鳥にどのような影響が及ぶかが不明確。開放水面の確保だけでは不十分。
表 5.10.18(2) 重要な鳥類の予測結果で個別の種類ごとに施設の利用(施設の供用)による影響の予測として「夢洲の会場予定地で確認された場所はウォーターワールドとして整備される予定であることから、工事中もこれらの水辺を休息等に利用することが可能と考えられる。
また、本種は近隣の野鳥園において確認されていることから、工事中に野鳥園を利用することが可能と考えられる。」という表記がほとんどの種に共通して記載されているが、ウォーターワールドの整備内容が不明なままにその影響を評価することは科学的でないと考える。

意見②
コアジサシと同様に事業予定地周辺の裸地で過去に繁殖が確認されているコチドリ、シロチ ドリについては、利用状況に「とまり、採餌」としか記載されておらず、影響評価の前提が適切ではない。両種は現在、南港野鳥園で営巣するものがなく野鳥園に代替機能はない。又、「グリーンワールド及び静けさの森の植栽は、本種の餌となる昆虫類が開催中も利用することが可能と考えられる。」との記載があるが、両種とも水鳥であり、森に生息する昆虫に依存する鳥ではなく、この評価は論外である。

意見③
「静けさの森の植栽」は湿地環境には適切ではなく、現在の湿地内や周辺のヨシ原を保存することで、ヨシ原に生息する鳥類や昆虫類の生息環境を守ることができる。さらに、この地を狩り場とする絶滅危惧種のチュウヒおよび他の猛禽類の保護につながる。大阪湾岸での貴重なヨシ原環境の維持を優先して行うべきである。台風や大雨や強風など気象条件の被害を受けやすい夢洲埋立地に森をつくる計画は、倒木による甚大な自然被害などを受けやすい環境を創生することにつながるので、維持管理面からみても不要な計画と考える。

準備書記載 〔工事中〕・工事の実施に当たりコアジサシの飛来が確認された場合には、「コアジサシ繁殖地の保全・配 慮指針」(平成 26 年、環境省自然環境局野生生物課)に基づき、防鳥ネットによる被覆等の営巣防止策を実施する。また、営巣が確認された場合には、付近を原則立入禁止とする等、 配慮、対策を行う。

意見
 コアジサシの保護については、昨年来の経過もあり、慎重な対応をお願いしたい。日本野鳥の会大阪支部としては、コアジサシの飛来時期と繁殖期を中心に適宜、現地調査を行うなどし、工事中の影響を最小限に止めるため、事業者への助言や協力を行うことが可能であり、工事の進捗やコアジサシの飛来状況等の情報共有を図り、協働できることを強く望みます。