小海途銀次郎(大阪府鳥獣専門員)

自然界のルール
自然界は弱肉強食の世界で、傷ついた弱い個体は自然淘汰されます。食物連鎖の上位に位置するものは下位のものを餌として捕食し生存しています。これは自然の摂理であり人が介在することはできません。
保護の対象
私たちが介在して傷ついたり、弱っている野生鳥獣の保護を行うのは不幸にして交通事故や人工構造物などに衝突するなど人が傷つけてしまった野生鳥獣を対象とし、なおかつ自然復帰を目指してのことです。もちろんこれを実現するには傷病鳥獣の救護設備や人材の確保が必要となります。
救護獣医師ボランティア
昨今の経済情勢ではこれに必要な費用を確保することは至難の業ですが、幸いにして大阪府、大阪市の獣医師会の協力を得ることができ、現在106 名の救護獣医師がボランティアで治療を実施しています。弱っていて救護を必要とする野生動物を見つけた人は府や市町村の担当課に通報し近くの動物病院を紹介してもらい、その方が持ち込めば治療してもらうことが可能です。治療後の鳥獣は野に返されたり、野生復帰が可能でなおも保護が必要なときはこれも登録されている野生鳥獣保護飼養ボランティアに一時的に預けられます。
ヒナは拾わないで!!
この場合、野鳥類のヒナは対象に入りません。日本鳥類保護連盟や日本野鳥の会が行っている「ヒナは拾わないで!!」の運動にありますように、ヒナを拾うのは誘拐になります。拾った場所に返すように指導しています。救護しようとした人は心外かと思いますが、そのようなヒナのすぐ側には必ず親鳥がいて餌を与えながら安全な場所につれて行きます。しかし、これも時間がたち過ぎると親鳥のヒナ鳥に対する執着が切れてしまうので早いほうがいいわけです。また人が世話をしても餌のとり方、水の飲み方、飛び方また猛禽類からの避難方法などヒナに教えることはできないため、親鳥のもとで成長するのが一番良いのです。
そっと見守りましょう
野生鳥獣はペットではありません。人間の思い込みや身勝手な考えでむやみに手を出すことはせず、なるべくそっと見守りましょう。それが自然との正しい接し方です。